制度と規範
持続可能な社会の発展と民主的なガバナンス
21世紀の今日、デモクラシーの原理は国家の政治体制だけでなく、人々が日常生活を営む社会のガバナンスの領域へと広く浸透しつつある。デモクラシーの実現のためには、議会や選挙、政党政治といった諸制度が重要であることは言を俟たない。だが、それだけではデモクラシーの論理が完遂した世界とはいえない。
性別や人種、生れや職業による差別に抗する平等で寛容な精神の涵養、人々が集まって身の回りの出来事から国際問題まで対等に議論する討議の習慣の定着、社会正義を重んじる公正な手続きの確立など、狭義の統治機構にとどまらず、広く社会全体の変革が必要となる。
とりわけ近年では、環境問題や地域の活性化、経済格差の解消、企業と市民セクターの共同事業の遂行など多彩な領域において、持続可能な発展を推進するための新しいガバナンスのモデルとして、マルチステークホルダー・プロセスが注目されている。様々な組織や個人がステークホルダーとして、地域や企業が抱える課題を対等な立場から討議し、協働して解決に取り組むような合意形成プロセスの確立は、成熟したデモクラシー社会の実現のために不可欠である。
本サブユニットでは、政治学、法学、経済学、商学に携わる研究者が、21世紀型のデモクラシー社会を構築するガバナンスや法、市場や政治文化について学術的に分析するとともに、エンゲージメント・スタジオやブリッジング・オフィスを活用して、産業界で活躍する人々や企業との連携を積極的に図る。その上で最終目的として、大学の内側と外側という垣根を越境し、人間の尊厳を機軸に、地球環境と地域社会の発展が調和した未来を創造するような社会実装を遂行する。