PROJECT

概念と歴史

芸術における自律性と公共性

古代ギリシア以来、つねに「自然」との相関関係のなかで捉えられてきた「芸術=技術」は、近代にいたってその模倣的な機能にとどまらない創造的な価値を認められ、自律的な地位を獲得する。この転換が意味していたのは、一方では芸術に対する(過剰な)確信、すなわち人間の自由な創造力が持つ可能性への期待の高まりと、人為の無際限な氾濫がもたらす危険性に対する忘却であったが、他方においてそれは、芸術が一種の独立した閉鎖的な体系として社会の一区画に囲い込まれ、その革命的な潜勢力が馴致されていく過程の端緒でもあった。「芸術の自律性」とは、人間的なものの価値が大きく揺らいでいる現代社会において、その意義をあらためて批判的に問い直し、そこから人間の尊厳を再定位するための必須の観点の一つといえるだろう。

このような関心を出発点とする本サブユニットは、「芸術の自律性」をめぐる諸問題の検討にあたり、さらに「公共性」という観点を導入する。人間を「政治的動物」と定義したアリストテレスの知見に立ち戻るなら、「公共性」とは人間性を構成する主要な要件の一つであり、それは芸術にも同様にあてはまる。芸術という自律的な人間の営みが、同時代の社会的・政治的問題の布置のなかで担いうる公共的役割に対して、複数言語圏にまたがる多様な事例を通して歴史的な観点から光をあてることが、本サブユニットの課題である。

MEMBER

慶應義塾大学文学部准教授
西尾 宇広
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慶應義塾大学理工学部専任講師
石川 大智
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