PROJECT

制度と規範

グローバル社会における主権国家と人権の行方

Big TechやBig Fiveと呼ばれる情報技術産業をはじめとした多国籍企業の経済活動は、世界中の人々の生活に広く浸透している。グローバル化が進む今日、現実の世界においても、仮想空間においても、人々の交流は国境を越えて拡大し、これまで考えられなかったような出会いや発見をもたらしている。しかしそれに伴って、従来の主権国家の枠組みでは対処できない新たな衝突や人々の尊厳を侵害する行為が多発している。さらに、領土や主権をめぐる国家間の対立もまた、減少するどころか、激化している。国家の境界にこぼれ落ちた人々の生命や権利は、誰によってどのように保護されるのか。

本サブユニットでは、ボダンやホッブズらによって唱えられた主権論の起源に遡りながら、それが西洋から東アジアをはじめとした世界へといかに伝播し普及したのか、果たして人類史上において主権国家とはいかなる存在であるのか、歴史的かつ哲学的視座から捉え直す。そこでは、哲学や政治思想史はもとより、最新のグローバルヒストリー研究をはじめ、政治史や経済史、文化史や美術史などの知見を広く活用することが求められる。その上で問われるのは、主権国家の現在である。

21世紀に入り、インターネットの普及を通じてかつてない速度でグローバル化が進展し、SNSによって世界中の情報にアクセスすることが可能となり、国際的な市場が確立されるなかで、主権国家という枠組みはもはや無用となるのだろうか。今なお主権国家が実体として存在する理由があるとするならば、それはいかなる意味においてなのか。過去と現在を架橋しながら、経済学、商学、法学、政治学を含む領域横断的な研究を遂行する。