PROJECT

総合研究(基礎ユニット)

X Dignityの土壌

「基礎ユニット」は、X Dignityセンターの様々なサブユニットの基底となる土壌を耕すことを目的とする。生成AIの登場などを通じて、既存の人間と機械との関係性が曖昧化するなど、様々な境界の融解が進む21世紀では、従来の近代的な法や政治を支えてきた、人間の主体性や責任、権利や自由の概念が根底から揺らいでいる。

動植物との共生をはかる地球環境の視座からも、またAIとの関係においても、様々な領域の融和が進む今日、持続可能で包摂的な社会の発展を実現するためには、相互に侵食する関係性のなかに均衡点を探り、多様な「善き生」を存立せしめる「尊厳(Dignity)」とは何か、新たな視座から再定義を行う必要がある。

尊厳という観念は、決して西洋世界のみに起源をおくものでも、また近代社会に固有のものでもない。尊厳とはもはや必ずしも自明なものではなく、人間のみに特権的に付与されているわけでもない。

この「基礎ユニット」では、各サブユニットの代表者、ならびに中核的な研究者が集まり、洋の東西の哲学はもとより、文学、思想史、美学、倫理学、教育学や心理学のなかで歴史的に蓄積されてきた叡知に遡りながら、文明や文化、国境を越えて、人間とは何か、尊厳とは何か、徹底的に討議する。さらにその議論を基礎に、医学や認知科学、生物学など自然科学系や工学系の専門家と、社会領域である法、経済、政治、経営、宗教の分野の研究者が集まり、AIやVR、アーキテクチャを活用した21世紀のデモクラシーの可能性を極限まで探究するとともに、21世紀の法的世界を成立させる根源的な原理や、人間の心身に介入する科学技術の倫理的な臨界点について解明を進める。

「基礎ユニット」は各サブユニットの成果を吸収して綜合するとともに、それぞれのサブユニットにその養分を還元し、ユニット間の融合と分離を促進することによって、X Dignity センター全体を推進する理念となる、新たな価値の創造を企てる。