【出版案内】書籍「怪獣化するプラットフォーム権力と法」シリーズ(全4巻)
当センターの共同代表が編集代表を務めた「怪獣化するプラットフォーム権力と法 第Ⅰ巻 プラットフォームと国家――How to settle the battle of Monsters」がこの度出版されました。2024年8月から刊行開始となったシリーズ「怪獣化するプラットフォーム権力と法」では、ネットワーク空間における新たな秩序の形成を目指し、デジタルプラットフォームのもつ機能と課題を検証します。本シリーズは全4巻構成となり、各シリーズの案内はこちらからご確認いただけます。
第Ⅰ巻 プラットフォームと国家
How to settle the battle of Monsters
「怪獣化するプラットフォーム権力と法」と題する本講座は、グローバルなメガ・プラットフォームを、海獣リヴァイアサンと二頭一対の陸獣として旧約聖書に描かれる「ビヒモス」に喩えて、リヴァイアサンとビヒモスの力の対抗と、その制御のあり方を法学的に検討し、自由と民主主義の行く末を展望しようとするものである。
「最強」だったはずの主権国家リヴァイアサンは、デジタルプラットフォーム(DPF)という新たな怪獣の挑戦を受け、その絶対性を失いつつあるようにも思われる。仮にDPFを、旧約聖書に登場するもう一頭の怪獣――「神の最高傑作」と称され、「造り主をおいて剣をそれに突きつける者はない」と形容される陸の怪獣――「ビヒモス」に擬えるならば、現在は、あらゆる領域において、リヴァイアサンとビヒモスとが激しくせめぎ合っているとも言えるだろう。その衝突ないし対決は、当然、以下のような規範的な問いを提起する。
どちらの怪獣がデジタル空間を「統治」すべきか、また両者の関係はどうあるべきか。国家とDPFとの衝突ないし対立は、デジタル空間における秩序のあり方を根源的に捉えなおすよう考えるよう、我々に迫っているのである。
提 言(山本龍彦、ポリーヌ・トュルク、河嶋春菜)
第1章 デジタル空間の統治をめぐる諸アクター
Ⅰ トマス・ホッブズとデジタル・ビヒモス―情報空間の混沌と「自然状態」(山本龍彦)
Ⅱ 国家とDPFの国際的対決と個人の保護―ビジネスと人権のアプローチから(ティティラット・ティップサムリットクン/河嶋春菜、荒川稜子 訳)
Ⅲ 抵抗するリヴァイアサンとデジタル主権(ポリーヌ・トュルク/河嶋春菜 訳)
第2章 デジタル空間の統治者をめぐる戦況
Ⅰ デジタル化と地政学化した世界におけるEUの主権(ポール・ティマース/荒川稜子 訳)
コラム イギリス―Brexit: 強いリヴァイアサンへ(荒川稜子)
Ⅱ 共生モデル―アメリカにおけるリヴァイアサンとビヒモス(ドンシェン・ザン/荒川稜子 訳)
Ⅲ 中国:主権の変容 ―デジタル魔獣世界と法秩序のイノベーション(季衛東)
第3章 デジタル空間の統治をめぐる攻防のフィールド
Ⅰ プラットフォームとの「パートナリング(Partnering)」―グーグル/メタとカナダとの戦いから学ぶ(イヴ・ゴモン、カトリーヌ・レジ/荒川稜子、河嶋春菜 監訳)
コラム ビヒモスを怪獣化させないために―デジタル課税の可能性(ローレンス・レッシグ/荒川稜子 訳)
Ⅱ 公衆衛生をめぐる国家とプラットフォームの攻防(河嶋春菜)
Ⅲ 「データの武器化」と安全保障におけるDPFの台頭(布施哲)